真南に向いた斜めの家

神奈川県三浦郡葉山町

クライアントから問い合わせを頂いたのは、2010年の5月末のことでした。
葉山で土地をご購入され、地元の会社で家を建てたいとのご要望で連絡を頂きました。その後、すぐに松匠創美のショールームでお話しを伺いました。

家族構成は、ご夫婦に小さいお子さん1人の3人家族。
ご要望としては、1階にLDK、和室、水廻り、フリーで仕事をされているご主人の仕事部屋。個室は2階へ、という事でした。また、奥様の要望として、入浴が楽しめる場所にお風呂と読書コーナーを設けて欲しい。ご主人の要望は「奇をてらう程ではないけど、ちょっと外した、それでいて身の丈にあった普通の家」と言うものでした。

敷地は葉山の閑静な住宅街で、東西にやや長い整形な形ですが、真南に対しては約20度振れた敷地でした。
敷地を見に行って直ぐに感じたのは、敷地に対して平行に計画するよりも、真南に正対するように計画すると採光が良くなるばかりでなく、視界に広がる空の面積が増え、目に入る緑も多くなり、近隣の建物からの距離を保つことができ、窓と窓が向かい合わないということです。また、外部にできる三角空間にも坪庭や物置場、風通しなど多くの利点があるようにも感じられました。幸い出来た計画は、ちょっと外したいご主人の意向と重なりそのまま設計を進めていくことになりました。

完成した家は、西側道路(袋小路)から少し長めのアプローチを抜けて奥まった北側の玄関に向かいます。玄関には鋳物職人に依頼して作ったロートアイアンの取手とポストがあります。玄関の中は風除室になっていて、冷暖房の空気が漏れるのを防いでいます。玄関から一つ目の扉を開けると大きな吹抜のある明るいLDKです。吹抜と階段の奥にある和室と北側のご主人の仕事部屋は斜め配置の効果で落ち着ける空間になりました。2階の計画では道路側に子供部屋、朝日が沢山入る東側に寝室と浴室があり、こちらでも斜め配置効果でプライバシーが守られつつ明るい空間になりました。

新しい生活が始まり、公園と化していた袋小路に面した子供部屋やLDKは近所の子供が集まってくれるそうです。東側に面した寝室には想像以上に朝日が差し込むのだとご主人が話して下さいました。長年仕事の関係で夜型だった奥様も朝型に変わったそうです。

実は、こちらの家の内装の壁と天井の漆喰は、ご主人が何日もかけてご自分で塗られました。今は住みながら外構工事をコツコツと進めていらっしゃいます。本当の完成まではもう少し掛かる様ですが、たまにお邪魔しては少しずつ完成していく様子を見るのは、私たちにとっても楽しみになっています。

 建設地:神奈川県三浦郡葉山町
家族構成:ご夫婦+子供1人
工事種別:新築
工事面積:165.99㎡
  竣工:2012年